発熱
私たち小児科医が日常的に診る症状で頻度が高く、かつ家族が一番心配するのは発熱、特に赤ちゃんの発熱でしょう。結論から言いましょう。過剰な心配はいりません。なぜ発熱するのかはいまだよくわかっていませんが、発熱することによって体に悪さをしているウイルスや細菌が増殖しにくくなることは明らかになっています。発熱は病気のサインであって悪い症状ではないのです。それと熱の高さと病気の重さは関係ありません。高熱でも機嫌が良く食欲もあるようなら大丈夫、逆に微熱でもぐったりしている、ミルクを飲まないなどは要注意でしょう。
熱が高いと頭がおかしくなる?それも過度の心配はいりません。文献によると人間の脳細胞は42~43℃以上になると脳細胞が壊れる可能性はあると読んだ覚えがありますが、私の経験では42.6℃の発熱があると来院した患者様がいました。院内で再計測すると39℃をきっていました。どうも計測の条件もあるようです。患児が暑がって汗をびっしょりかいているのに毛布にくるんで布団に梱包されていたようです。汗が蒸発することによって体が冷やされ、熱が下がるのに、蒸発できなかったようです。
脳に異常を起こす病気で高熱のものもあります。代表的なのは脳炎、脳症、髄膜炎などです。これらは脳自体を傷つけてしまうことがあるからです。意識障害、痙攣、嘔吐などがある場合は要注意です。なるべく早く受診しましょう。
次に熱さましの話をしましょう。
まずは冷す、頭を少しぐらい冷しても熱は変わりません。冷すなら頚部・腋窩・鼡径部など大きな血管の通っているところですが実際には嫌がって無理でしょう。シート状の熱さましも市販されていますが、余り効果は期待できません。私の参加している学会で、全く効果はなかったという発表をした先生がいます。私は気持ちがいいなら使ってもいいよくらいに思っています。
次に解熱剤です。内服でも坐薬でも好みでよろしいと思いますが、私はよく内服を頓服で処方しています。熱がでることによって体を防御しているのに熱をさげるのはよくないといって、解熱剤は処方しない先生もいらっしゃるようです。私の考え方は少し違います。例えば入院している患者様なら普通は抑制帯で固定しているのでクーリングも点滴もできますし、それでよいでしょう。でも家で高熱でうなされている、水分もろくにとってくれないなど患児どころか家族も具合が悪くなるような状態で本当に良いのでしょうか?つらい症状を一時的にとってあげる薬として、上手に使ってみてはいかがでしょう。目安は38.5℃以上でつらそうな時です。元気がよい場合はたとえ39℃以上でも必要ありません、やはり状態をよくみることが大切です。解熱剤は鎮痛剤でもありますので大きな児では頭痛などにも使用できますが、小さい児は体温調節が下手なのでさがりすぎる場合がありますので、自分の症状をはっきり言えるぐらいになるまでは体温を目安に使用してください。現在小児で一番使われているのはアセトアミノフェンという解熱剤です。安全性が高くインフルエンザにも使用できます。薬によってはインフルエンザや水痘などに使用しない方が良いものもありますので、大人の薬を代用したりは絶対にしないでください。
夜中に熱が高くなったらどうしよう?そういう場合のために解熱剤は用意しておくのがよいでしょう。翌日熱が解がっていても必ず小児科を受診しましょう、それは熱が解がっているのではなく下げただけなのかも知れません。あくまでも原因の治療にはなっていませんので要注意。